テキトー日記

お出かけ感想日記なので不定期更新です。

i-LIMIT【猫と針】観てきました。

ネタバレと言うか...何かの機会まで、粗筋以外知りたくないって方は要注意なブログです。
……先に書いたので、苦情無しで!!

さてさて、i-LIMIT「猫と針」
初日9月4日(火)19:30〜と9月7日(木)14時〜の回を観てきました。
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どこから書き始めよう...
以下、書き綴っている台詞は
うろ覚えなりに、私の記憶に残ったものです。
なので多少の違いはお許しを。

始まりはこんな感じでした。

喪服姿のタカハシ(前田綾さん)、舞台上手から百合の花が活けられている花瓶とバックを持って登場。
舞台下手の床にゆっくりと置き微笑む。
後ろにある椅子二脚のうち一脚の足元にバックを置き紙袋を取り出し中を見て直ぐにしまう。
もう一脚を花瓶前に持ってきて座る。

ー独白のナレーションがかかる。
「ある日、映画の中で死んだはずの人が、また次の日には別の映画に出ていて驚いたことがある」(一部抜粋)

舞台暗転

サトウ(畑中智行さん)
「で、香典袋にはどうやって書くと思う?」
タナカ(阿部丈二さん)
「どう書くんだ?」
会話を座ったまま頷きつつ聞くタカハシ
中略
スズキ(袋小路林檎さん)登場
「ねぇねぇ、何の話?」
中略
サトウ「ここにいる連中でほとんどの日本人の苗字、揃ってるもんな、サトウ・タナカ・タカハシ・スズキ」
サトウ/タナカ「ヤ マ ダ!」
ヤマダ(石原善暢さん)登場
「こんなに風が強いって聞いてないぞー」

で、五人、全員が舞台に。

舞台暗転の直後、目の前に役者さん増えてるからビックリしました(笑)
うろ覚えなりに飛ばしたところも実はけっこう覚えてます。
書き出したらかなりいけそうですが、止めときます。

本を読み進めるように頭の中で文字として浮かび上がる役者さんの動きや台詞が、不思議で仕方なかったです。
でもその事で逆に集中が高まるので、そのまま頭に浮かぶ文字を後追いしつつ観劇。
ちなみに偶然、演出を知らず下手の前列に座ったので、百合の花の香りが漂って、尚更、別世界感がありました。

その百合は亡くなった高校時代の同窓生のオギワラの代わり、名前だけ出てくるのは、もう一人キクチ。

テーマ『人はその場にいない人の話をする』

それは陰口・悪口だけじゃない。
例えば同席した人が席を外した時、
例えば共通の知人がいる人どうし、
例えば本人には聞けないけど知ってる人はいそうな場所、
例えば、例えば、例えば……

二度目に観に行く間に、私はずっと連絡を取っていない知人・友人・親戚への思いで苦しくなるようなことがありました。
今更、何が出来る?こんな時に誰を伝って連絡取れる?それ自体が迷惑行為かもしれない時に?

頭の中でグルグルと際限なく回る堂々巡りの思考の中で、15年ぶりに集められた4人と1人の物語を、もう一度観たいと思う気持ちにかられました。

最初に感じた「本を読み進めるように動く物語」が、唐突に「もし、私がいきなり15年ぶりに繋がりのあった同窓生に呼ばれたら?」と、自分の物語として観てみたくなりました。でもこれは終わってから落ち着いて思い返して、気づいたことです。

話、戻します。

実は殺人事件の被害者のオギワラの葬儀当日、
その日は偶然、今は駆け出しの映画監督になった
タカハシにエキストラとして集められ、
その指定衣装が喪服。だから全員、喪服姿。
場所は葬儀後に移動した某スタジオ。

タカハシ1人で「ドキュメンタリー風のファンタジー映画の1場面」の撮影日、
ドキュメンタリー風ファンタジー映画...
『なんか矛盾してない?』は、ちゃんと
スズキの台詞にあります(笑)
四方山話で、一通りの上辺の人物像は
ここまでで掴めます、皆の会話と
百合の花へ、サトウ・スズキが独白することで……
(タナカ・ヤマダの独白はこの後...だったはず)

そしてそれぞれに割り振られたセリフが書かれた紙を持ちリハーサル。
ここで皆が真面目に挑んで最後に言うサトウのセリフからの皆のリアクション、笑ってしまったのですが、初日のほうが客席からの笑いが多かったです。
他にも数ヶ所、2回目は、ずっとシリアスな空気感が抜けないままで、そこがまた面白いなと思いました。(私は2回目、オチを聞く前に笑いそうになって、好きな映画を観ているような気持ちになりました)

そして話は、何故この4人が集められたのか?とタカハシが席を外した時にタナカが口にすることで、より強く動き始めます。

「まさか俺たち恨まれてるのか?」
「何故?」
「そう言えば、高三の夏休みタカハシが撮ってたフィルムが盗まれたことがあったよな」
「疑われているのか?」
「人はどんな理不尽な理由で他人を恨むかなんて分からないんだよ!そこに居ただけで、ただ歩いていただけで!!」
「そんな...自信無くなってきた」

落ち着かないタナカは戻ってきたタカハシに疑問をぶつけることで、今度はサトウがもう1つのアクシデントを思い出す。
サトウ/ヤマダ「食中毒事件!」

そして話はまたオギワラやキクチの話へ...

ずっと何を考えているのか分からないタカハシ
仕事のストレスで我慢の限界に近づいているサトウ
忙しすぎる仕事のせいで家庭も上手くいっていないタナカ
妻が精神を病み数ヶ月前に自殺したヤマダ
一見、平凡な主婦に見えるスズキ

ツイッターの感想でも多かったサトウの独白
「人は他人の話なんて、金でも払って貰わなきゃ聞かないもんだよな。その点お前は強かったよ、オギワラ。俺な、仕事で相手の顔をみた瞬間に分かることがあるんだ。『ああ、素敵な俺のゲロ袋へようこそってな』これでも、俺のゲロ袋は大きいつもりだけど、それでも限界ってもんがあるだろ?もうそろそろ俺のゲロ袋も限界なんだ。生きてる間にお前に話、聞いてもらっていたら良かったよ」

オギワラは精神科医なんだろうな、
そうやって浮かぶ、ここにいない人。
キクチも同じく。少々、不穏な人物として...


ずっと明るく、いかにもベテラン営業職としての人当たりの良さを出しているサトウの闇。
思うところが多い人が多かったの分かる気が。


もう1つ、ヤマダがタカハシと2人で交わす会話で語り出す、妻への率直な思いと罪悪感。
「墓場まで持って行くなんて、なかなか出来るもんじゃないな。2時間ドラマなんかでさ、日本海の崖の上で犯人が延々と話す理由が分かったよ。でも懺悔って、ちょっと気分が晴れるもんだな」


……言葉が出なかったです。
私は実際、自分の気持ちを吐き出したかったし、
やり場のない申し訳のない気持ちもふりほどきたかった。
一度目では、そこまで感じなかったこと。
ちょっとの気持ちの変化で変わる、
台詞の響きと思い。
初日と(一見)何も変わらず動く物語と登場人物。
でも違った。

話は、そのまま食中毒事件の真相と盗まれたフィルムのことのみ解決。ここは割愛。
なぜなら書くと覚えている限りのことを
再現したくなって長くなるから(笑)

でもスズキがタカハシに話す
「悪意の在り処と証明」の話、
あれもしかしてコロンボ!?んんん?
って、ちょっとなった事は置いといて、

「それなら知らずに人の1人くらい、
私も殺しているのかもしれないね」

一つ一つ小さな棘のように刺さる言葉が
紡がれていく物語。
痛みは当然、感じる。
なのに不思議と嫌な後味は残らなかった。

終幕へ

「そう言えば、俺たち葬式帰りだったな」
「葬式って一種のコスプレだな」
「実際、演技するしな」

この場面、何故かとても作家さんの脚本っぽいと
感じました。何が?と聞かれても全く答えられないど素人なのに...

「次、いつにしようか?」
何気ない、タナカのこの一言、好きです。
特に「そうだね」とその場で決めようとしないことも含めてリアルだなと……

そして明日は?
客に謝罪に行かなければならないサトウ
裁判所に呼ばれているタナカ
子どもの登校拒否で先生の訪問があるスズキ

Show must go on
初めて観た時に感じた感想。
2回目、タカハシの台詞に、こうありました。
「それでも人生は続く、だね」

もしかして、この言葉が残ってたからの感想だったかもしれないです。
一旦開けた幕は下ろせない。
人生も同じく……フィナーレを迎えるまで、
それは、もしかして死ぬまで、ずっと。


1人1人が舞台から去り、
タカハシとヤマダの会話の後、
ヤマダが去り……


最後の最後にタカハシの独白

「映画の仕事をずっと続けていると、カメラの向こう側とこちら側とどちらが現実か分からなくなる時が増えていく。いつからだろう?私は私の人生を撮影された画面の中でしかリアルに感じられなくなったのは...それは、あの夏からだ。誰か私の人生を撮影してくれたらいいのに、そしたら私は、これは本当に私に起こったことだと実感できるのに...」

おそろしいまでのリアルさでリアルを感じられない人間の抱えるふわふわとした掴みどころの無さを、誰にも言えない屈折を、タカハシ役の前田綾さんはずっと「演じて」いました。
あの表情や言葉の抑揚の違和感は、
こういうことだったの?本当にそれが正解?
書いてて、ちょっと背中に冷や汗……


私は恩田陸さんの小説を読んだことがありません。
でも上橋菜穂子さんの「精霊の守り人」での
解説の文章が素晴らしくて、ずっと覚えていました。
と言うより、この「猫と針」の台詞のはしばしに
恩田陸さんの思想と言うか言葉のブレなさが
浮かび上がってきました。

『生きていくということは、この世界についての自分の地図を作ることだと思う。道も、景色も、自分で見つけていかなけらばならない。
人が造った道を辿ることもあるし、草だらけの暗いけもの道を四苦八苦して進むこともある。
(中略)
今も悩み苦しみつつ死ぬまで自分の地図を作り続ける大人たち、地図作りのつらさを知っている大人たちが面白く読める異世界ファンタジーは、冷徹なまなざしを持ち、鋭く人間を観察できる力を持った真の大人────それでもなお、ほんとうの夢見る力を持ち続けている大人が書いたものに限る、ということである。(一部抜粋)』

地図作り……
「30(歳)になることすら、
あの頃は想像出来なかったな」

何歳になろうときっと同じことを思いながら、
足元を見た時、そこにあるのはどんな道なのか、
顔を上げた時、見える季節はいつなのか、
きっと、あの場にいた方がそれぞれに浮かべたのでは?などと思っています。
そして、とても上質な「ドキュメンタリー風ファンタジー」でした。


初日の挨拶で感極まって決壊しかけたところを
すんでのところで畑中さんからのツッコミで耐えた
石原善暢さん、素敵な舞台、
本当にありがとうございました。
何故、最後の「猫と針」なのかな?はリーフレットで納得しました。
vol.2、楽しみにしています!

前田綾さん、美しい人は時々、怖い。
まんまでした(笑)
感想...どうしよう?質問の嵐になりそうなので
逆に浮かばない。
ツイートで見た多田さんの「もはや美しい」
名言すぎ!!

阿部丈二さん、テンションの上がり下がりの大きい役、お疲れ様でした!ラスト、皆に最後の弱みを自ら告白しつつ「次はいつにする?」と何気なく出る台詞、良かったです。

畑中智行さん、逆にテンション保つ役どころだったかな!?その前に一旦、おとなげない爆発してる設定でしたし...でも共感する方が多い台詞が多かったかと。

袋小路林檎さん、普通に見える人が普通な役を普通に演じてらっしゃる作品、私は好きなのですが、林檎さんが、まさにそういう役者さんでした。
とても良かった。
石原さんとの笑顔を絶やさない物販、
お疲れ様でした。


そんなこんなで2時間弱の素敵な時間を
頂いてきました。

ここに書き切れない他のことは、もう一つ
書こうと思います。

もしここまで、読んでくださった方がいるなら
長々とありがとうございました!
でも足りないんです!!

なので、一旦〆て、改めます。
楽しかった。痛みがあっても楽しかった。
もっと短くまとめられるように努力します。